長田抗生物質研究室
主任研究員
長田 裕之

- 略歴
- 1983
- 東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻 博士課程修了
- 1983
- 理化学研究所 抗生物質研究室 研究員
- 1992
- 同 主任研究員(現職)
- 2008
- 同 ケミカルバイオロジー研究領域 領域長(現職)
- 2009
- 同 ケミカルバイオロジー研究基盤施設 施設長(現職)
- 2011
- 同 理研-マックスプランク連携研究センター 連携センター長(現職)
- 2011
- 同 バイオプローブ応用チーム チームリーダー(現職)
- 2011
- 同 理研-KRIBB連携研究チーム チームヘッド(現職)
- 2011
- 同 理研-USM連携研究チーム チームヘッド(現職)
研究概要
微生物の代謝産物には、抗生物質を始めとして様々な有用生理活性物質が含まれる。薬として用いられている高脂血症治療薬や免疫抑制剤、そして細胞生物学の道具として有用な細胞機能調節物質などが微生物から得られている。当研究室では、微生物代謝産物から新しい細胞機能調節物質(バイオプローブ)を探索し、細胞機能の解析研究に用いている。真核細胞の分化・増殖・アポトーシスの制御を目的として、微生物代謝産物やNPDepoに収蔵されている化合物から新しいバイオプローブを探索している。同時に微生物の代謝産物の網羅的解析・取得を行っている。さらに、分子生物学的アプローチとバイオプローブを用いた生化学的アプローチの両面から、細胞内情報伝達機構の解析を行い、新たな分子標的を開拓している。
最近の研究成果
化学の力で生命を探る

- 図1 当研究室で発見されたバイオプローブ
当研究室では、これまでの抗生物質研究を基盤として、医薬品や試験・研究用試薬を市場に出す事を目指して様々な研究を進めており、微生物由来の化合物を生化学用試薬として商品化もしている(図1)。微生物代謝産物には興味深い生理活性を示す小分子があるので、それらを生合成する遺伝子クラスターをクローニングすることで、思い通りの化合物を作るプロジェクトが進行中である。そのような微生物代謝産物を集積し、新しい生理活性物質をスクリーニングするためのケミカルライブラリーも作製している。そのために、当研究室で単離した化合物だけではなく、他機関等で合成もしくは単離された化合物を収蔵する理化学研究所NPDepoを立ち上げ、あらゆる研究者が薬のスクリーニングなどに使用できるようにしている。
一方、ハイスループット・スクリーニングシステムを開発する事も、化合物の持つ生理活性を見つけ出すために重要である。最も強力なスクリーニング法のひとつである化合物アレイを用いて、癌細胞の増殖、分化、細胞死に関わる酵素群の阻害剤探索を行っている。
同時に、新たに単離された化合物の標的分子をプロテオミクス法(2D-DIGE)やアフィニティビーズを使うことにより同定している(図2)。細胞を使ったスクリーニングで発見したリベロマイシン(図3)、エポラクタエン、これとは逆に、標的をあらかじめ決めたスクリーニングによって発見したRK-682とRKTS-33、いずれも研究用試薬として市販されている。このような研究から生まれた化合物を、複雑な生命現象解明のさぐり針となることから「バイオプローブ」と名づけた。これらは、単にケミカルバイオロジーの道具としてだけではなく、新しい抗がん剤などの候補にもなる。分子生物学の進歩により開発された様々な技術の中でも、RNAi技術は複雑な生物システムにおけるそれぞれのタンパク質の機能解析を容易にしている。一方、ケミカルバイオロジーでは、RNAiや遺伝子改変技術を使う代わりにバイオプローブを使用する。つまりバイオプローブの添加と除去により、タンパク質の機能を素早く思い通りに変化させられるようになった。
近年、多くの製薬会社は天然化合物のスクリーニングからコンビナトリアルケミストリーを使ったハイスループットスクリーニングへと転換している。天然化合物のスクリーニングは、時間とお金のかかる効率の悪い戦略であり、コンビナトリアルケミストリーは効率の面から魅力的な方法だと考えられている。しかし、天然化合物、とりわけ微生物代謝産物には新しい構造と有用な生物活性を持った興味深いリード化合物が含まれており、宝箱のようなものである。ケミカルバイオロジーは、新しいバイオプローブを基盤に発展する魅力的な新領域である。

- 図2 ケミカルバイオロジーにおけるバイオプローブの使用例

- 図3 破骨細胞分化に対するリベロマイシンの効果
主要論文
- M.M.G. Khan, et al. Discovery of a small molecule PDI inhibitor that inhibits reduction of HIV-1 envelope glycoprotein gp120, ACS Chem Biol. 2011, 6, 245.
- A.M. Ryden, et al. H. Bouwmeester, O. Kayser, Molecular cloning and characterization of a broad substrate terpenoid oxidoreductase from Artemisia annua, Plant Cell Physiol. 2010, 51, 1219.
- Y. Tamura, et al. Polo-like kinase 1 phosphorylates and regulates Bcl-xL during pironetin-induced apoptosis, Oncogene, 2009, 28, 107.
- S. Takagi, S. Simizu, H. Osada, RECK negatively regulates matrix metalloproteinase-9 transcription, Cancer Res. 2009, 69, 1502.
- K. Kawai, A. Kawasaki, T. Sudo, H. Osada, A p38 mitogen-activated protein kinase inhibitor screening method using growth recovery of Escherichia coli as an index, Anal. Biochem. 2009, 388, 128.
主要メンバー
| 学生・研究生 |
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| 原 秀太 |
Shuta Hara |
大学院生リサーチ・アソシエイト |
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| リーチン・オイ |
Li Ching Ooi |
国際プログラム・アソシエイト |
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| 技術系アシスタント |
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| 池野 あゆみ |
Ayumi Ikeno |
テクニカルスタッフⅠ(支援促進チーム テクニカルスタッフⅠ) |
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