中川RNA生物学研究室

准主任研究員

中川 真一

  • Shinichi Nakagawa
  • 博士(理学)
  • 中川 真一
  • 略歴
    1998
    京都大学大学院理学研究科生物物理学専攻 博士課程修了
    1998
    英国 ケンブリッジ大学解剖学教室 HFSP長期奨学生
    2000
    京都大学大学院生命科学研究科 助手
    2002
    理化学研究所 発生再生科学総合研究センター 研究員
    2005
    同 独立主幹研究員
    2010
    同 中川RNA生物学研究室 准主任研究員(現職)

研究概要

中川RNA生物学研究室

古典的なセントラルドグマの考え方によれば、ゲノムDNAに刻まれた遺伝情報を最終的に遂行するのは機能分子であるタンパク質であり、RNAは単なる情報の仲介役であると考えられてきた。ところが近年になってタンパク質に翻訳されない「ノンコーディングRNA」が高等真核生物のゲノムから大量に転写されていること、それらが様々なレベルで遺伝子発現を調節する機能分子として働いている事などが明らかにされ、ノンコーディングRNAこそが生物の複雑さや多様性を生み出す原動力になっているのではないかという魅力的な考え方も提唱されている。当研究室では大量に存在するノンコーディングRNAの中でも細胞の核内に蓄積して安定な構造体を形成するというユニークな性質を持つ一群の遺伝子に注目し、その生理的な機能を実験生物学的な手法を用いて解明することを目指している。また、興味深いことにこれら「核内構造性ノンコーディングRNA」は進化の過程で最近になって地球上に現れた高等真核生物でのみその存在が確認されており、その物理化学的な性質を詳細に調べることによって、進化的に「新しい」生物における巧妙な核内制御機構が明らかにされることが期待される。

最近の研究成果

進化的に「新しい」mRNA型ノンコーディングRNAたち

胎生9.5日目マウス胚におけるGomafuの分布
図1 胎生9.5日目マウス胚におけるGomafuの分布
神経系で特異的に発現していることが分かる
3種類の核内高分子mRNA型ノンコーディングRNAの分布を蛍光in situ hybridizationで可視化したもの
図2 3種類の核内高分子mRNA型ノンコーディングRNAの分布を蛍光in situ hybridizationで可視化したもの
緑がRNAの分布で紫がDAPIによる核染色。左から成体マウス大脳皮質の錐体ニューロンにおけるGomafuの発現、マウス繊維芽細胞におけるMalat1およびMENの分布。Malat1およびMENε/βはそれぞれ核スペックル、パラスペックルと呼ばれる核内ドメインに局在している。

我々は神経細胞の特定の細胞タイプで発現する遺伝子をスクリーニングする過程で、転写産物が細胞核に局在するという非常にユニークな性質を示すmRNA型のノンコーディングRNA遺伝子を同定し、その特異的なドット状の(胡麻斑状の=Gomafu)細胞内局在にちなんでGomafuと名付けた。通常、タンパク質をコードするmRNAは、5'末端のキャップ構造の付加やイントロン配列の除去などの転写後プロセシング反応が引き金となって、速やかに細胞質へと輸送されることが知られている。ところがGomafuの転写産物は、それらmRNAと同様のプロセシングを受けるにもかかわらず、成熟転写産物が核内に繋留され、不溶性の構造物を形成していた。核内には特定の機能を持ったタンパク質が集積した核内ドメインが存在することが知られているが、Gomafuの局在は核小体や核スペックル、パラスペックルやカハール体などの既知の核内ドメインマーカーとは重ならず、新規の核内構造体を形成しているものと考えられた。Gomafuの発現は胎生期の神経系の幅広い領域で最終分裂を終えた神経細胞で始まり、成体マウスの脳においても一部の神経細胞において非常に強い発現が持続してみられた。一方、脳以外の組織においてはほとんど発現が見られず、神経系においてもグリア細胞では全く発現が見られなかった。さらに詳細にGomafuの生理機能を明らかにするために、我々はGomafuを欠失するノックアウトマウスを作製し、その表現型の解析を進めている。その結果、Gomafuノックアウトマウスの外見は正常なものの、行動異常を示すことが明らかとなりつつある。これらのことから、Gomafuは神経系が正しく機能するために必要な何らかの核内プロセスを制御していると考えられる。Gomafuの他にも核内で安定な構造体を形成するmRNA型のノンコーディングRNAとしてMalat1、MENε/βなどが知られているが、当研究室ではこれらの遺伝子に関してもノックアウトマウスを作製し、その表現型の解析を進めている。これらの核内構造性ノンコーディングRNAは現在のところ哺乳類でのみその存在が確認されており、進化の過程で高等真核生物が獲得した特殊な核内プロセスを制御しているものと思われる。

主要論文

  1. S. Nakagawa, T. Naganuma, G. Shioi, T. Hirose, Paraspeckles are subpopulation-specific nuclear bodies that are not essential in mice, J. Cell Biol. 2011, 93, 31.
  2. S. Nakagawa, KV. Prasanth, eXIST with matrix-associated proteins, Trends Cell Biol. 2011, 21, 321.
  3. H. Tsuiji, R. Yoshimoto, Y. Hasegawa, M. Furuno, M. Yoshida, S. Nakagawa, Competition between a noncoding exon and introns: Gomafu contains tandem UACUAAC repeats and associates with splicing factor-1, Genes Cells 2011, 16, 479.
  4. Y. Hasegawa, N. Brockdorff, S. Kawano, K. Tsutui, K. Tsutui, S. Nakagawa, The matrix protein hnRNP U is required for chromosomal localization of Xist RNA, Dev. Cell 2010, 19, 469.
  5. M. Sone, et al. The mRNA-like noncoding RNA Gomafu constitutes a novel nuclear domain in a subset of neurons, J. Cell Sci. 2007, 120, 2498.

主要メンバー

主宰者 add delete
中川 真一 Shinichi Nakagawa 准主任研究員    
スタッフ研究員 add delete
ポスドク add delete
石田 賢太郎 Kentaro Ishida 協力研究員    
石塚 明 Akira Ishizuka 特別研究員    
長谷川 優子 Yuko Hasegawa 訪問研究員    
ユエン ヤン・ジョアンナ・イプ Yuen Yan Joanna Ip 訪問研究員    
学生・研究生 add delete
技術系アシスタント add delete
屋中 香織 Kaori Yanaka テクニカルスタッフⅠ    
事務系アシスタント add delete
客員研究員・客員技師 add delete
その他のスタッフ add delete
梨木 千絵子 Chieko Nashiki 一般事務パートタイマー    
このページのトップへ▲